増え続ける児童虐待にストップをかけるため、平成24年の民法改正で、「親権停止制度」が新たに創設されました。
親権停止制度とは一体何でしょうか?
1.親権停止制度とは ─どうして民法が改正されたのか?
日本全国で、痛ましい児童虐待が後を絶ちません。中には子どもが死に至る最悪のケースも存在します。
悲しいことに、子どもを虐待する多くは実の親なのです。
親には子どもの身の回りの世話をし、しつけや教育をする権利や義務があります。
しかし、しつけの域を超えた暴力を振るったり、養育放棄(ネグレクト)をしている場合、それは不適切な親権の行使であり、児童虐待と言えるでしょう。
このような親への対応として、今までは「親権喪失制度」しかありませんでした。
しかしこれは、親権を無期限に剥奪するものであり、親子関係の修復が難しいことから、活用がしにくいと言われてきました。
そこで、児童虐待防止のために、平成24年から民法の一部を改正・施行してできたのが「親権停止制度」です。
これは、必要に応じて一時的に親権を制限する制度であり、期間は最長2年と定められています。
親権停止期間中は、親権者に代わる未成年後見人が子どもの利益を確保します。
2.親権停止を請求するには
児童虐待などが発覚し親権停止の手続きを行いたい場合、家庭裁判所への申立てが必要になります。
民法改正で大きく変わったのが、子ども本人及び未成年後見人でも申請請求が可能になったということです。
親権喪失制度しかなかった時代、それを請求できるのは、子どもの親族・検察官・児童相談所長に限定されていましたが、今回の改正で、より迅速に対応ができるようになったと言えます。
また、どんな場合に親権停止の請求ができるかについても、民法に明文化されました。
民法820条には、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定められています。
親権があれば親が子に何でもしてよいという誤解を招き、児童虐待に繋がらないようにするためです。
そして、「子の利益を著しく害するとき」に、親権停止の請求ができるとされています。
3.親権停止中の子どもを守るのは誰?
親権について見直されると同時に、「未成年後見人制度」についても改定がなされました。
親権停止を決定すると、家庭裁判所は、親権者がいない子どもに対して未成年後見人を確保しなくてはなりません。
未成年後見人は、子どもの監護や財産の管理を行います。
今まで個人が一人で行うと決められていましたが、それではなり手の負担が大きく、人材が不足しているのが現状でした。
そこで、複数で未成年後見人になれるようにし、法人も選任可能としたのです。
以上のように、児童虐待防止のために、親権停止制度が新たに創設されました。
親権喪失制度との一番の違いは、一時的である、ということです。
親と子に距離を置かせ子どもの安全を守りつつ、その間に家庭の問題の解決を図り、親子関係の修復を目指すという狙いも併せもっています。
増え続ける児童虐待にストップがかけられるか、今後が期待される制度です。