養育費が支払われなくなってしまったら

子供
つらい離婚を経た話し合いの後、養育費の具体的な内容が決まったにも関わらず、ある時突然、その養育費が支払われなくなってしまうケースが、近年において増加傾向にあります。

養育費が支払えないという背景には、相手方―個々人により、様々な事情や理由があるとは思われますが、大切な子供の教育や生活のための費用がなくなってしまうということは、極めて厳しい状況です。

考えられる相手方の状況
  • 収入が少なくなってしまった
  • 失業して収入自体がなくなってしまった
  • 病気や事故による不測の事態が起こってしまった
  • 仕事や生活(日常)がうまくいっていない など

たとえ相手がどのような状況にあれども、養育費を支払わないことには早急に対応する必要があります。相手方に積極的に連絡を取りたくないという心情が大きいかもしれませんが、双方で話し合いを行い、養育費が支払われていないという問題の根本的な解決をはかることが大切です。

養育費は貴方の子供のお金です。貴方には子供の養育者として、子供の養育費を取り立てる義務があるのです。だからこそ決して諦めたり妥協したりせずに、まずは手紙や電話、メールでもいいので催促を促すことをお勧めします。これは相手方との戦いになり、取り引き・かけ引きになりますが、自身のためにも子供のためにも、経済的困窮に陥らないように対処していきましょう。

養育費の催促は離婚の仕方・状況によって対処法が変わります

養育費がきちんと支払われていない家庭は、離婚した男女5組のうち、およそ4組だという数字が算出されています。これには離婚後に、明確な取り決めや約束を交わしていなかったことが要因だとして主に挙げられています。

養育費の支払いに関して国は、民事執行法を改正・施行し続けていますが、効果が実際に反映されていないのが現状です。子供は、離れて暮らす親からも生活を保障される権利を有しています。子供の権利を守るためにも、貴方自身が適切に対処していく必要があるのです。

離婚の仕方・状況を確認しましょう。

公式な文書を残しましたか?

強制執行を含む公正証書により、明確な取り決めや約束をしている場合、養育費の支払いが少なくなったり滞ったりした時でも、相手方の財産を差し押さえて請求することが可能となります。

取り決めや約束は詳細に行いましたか?

養育費を振り込む具体的な日時、誰名義の銀行口座か、など、詳細をきちんと決めておくことによって、催促の際に支払われていない状況を立証することが出来ます。

支払う側による子供との面会は実行されていますか?

支払う側が定期的に子供との面会を実行している場合、養育費の支払いも実行することが多いと言われています。子供の成長を直に目にすることによって、相手方に責任と義務を実感させる効果があります。

離婚における公正証書とは何か

そもそも公正証書とは、「公証人(※法務大臣によって任命された後、法務局や地方法務局に所属する人々)」が法令に従い、法律行為やその他の私権に関する事実について作成する証書のことを指します。公正証書は法律上において、完全な証拠力を持っています。

契約などが不履行となった場合、この証書に基づいて「強制執行(※民事執行法に従った国家権力によって、私法上の請求権を強制的に実現するための手続き)」をすることが可能となっています。

個人が作成した私文書と違って、公正証書は証明力や執行力、さらに安全性が高く、当事者間における争いの予防・防止に繋がります。

離婚の際の公正証書―離婚給付契約公正証書によって、きちんと取り決めを交わしておくことで、その権利を保障・確保することが出来ます。特に金銭の支払いに関する項目の場合、強制執行認諾条項を付けておくことをお勧めします。

離婚給付契約公正証書の具体的な項目
  • 子供の養育費
  • 子供との面会
  • 子供の親権
  • 財産分与
  • 慰謝料 など

離婚における公正証書は、協議離婚の際に用いられることに注意して下さい。家庭裁判所の家事調停によって成立する調停離婚の場合には、調停調書が作成されることになります。

協議離婚

協議離婚とは、夫婦の合意によって婚姻が解消されることを指します。市区町村役場に戸籍上の届け出を行うことで、効力を生じます。夫婦間で話し合いをするだけでいいので、離婚に掛かる費用や時間が最も少ない方法だと言えるでしょう。日本における90%がこの方法により離婚をしています。ちなみに残りの9%が調停離婚、1%が裁判離婚という割合になっています。

※離婚届けの署名には本人を要しますが、提出は郵送でも代理人でも大丈夫です。
※双方の間に未成年の子供がいる場合、親権者を記入することになります。

両者の話し合いが成立した後、その際の取り決めや約束事は「離婚協議書」という合意文書として残して下さい。離婚を選択するのですから、一刻も早く離婚届に判子を押して終わらせたい…と、女性の場合、特に感情的になりやすい傾向にありますが、養育費を含め、慰謝料や財産分与など、金銭の関わる問題には、後々、言った言わないという論争に発展しやすいのです。そのようなことにならないために、離婚協議書を作成するわけです。

離婚協議書における重要な項目
  • 子供の親権者がどちらか
  • 子供の養育費の金額
  • 子供との面会交渉
  • 慰謝料と財産分与
※通常、養育費は子供が20歳になるまで義務が発生します。よって、子供が20歳以上の場合は、親権者を定める必要もありません。大学を卒業するまでなど、具体的な事項が必要な際は、あらかじめ加えておきましょう。

協議離婚においてなぜ公正証書が必要なのか

協議離婚が成立した場合、一般的には離婚協議書などの合意文書を作成することになりますが、この時、合意内容を「強制執行認諾文付きの公正証書」にしておくことが肝心です。個人の合意文書(私文書)には、法的な強制執行力がありません。だからこそ大切な子供と新生活のためにも、協議離婚の際には必ず離婚公正証書を作成して下さい。

たとえ養育費が支払われなくなるという事態に陥ったとしても、離婚公正証書あれば、強制執行が可能となります。強制執行をすることで、相手方の給料や財産を強制的に差し押さえ、養育費などの催促が出来るようになるわけです。

強制執行を付けた公正証書―強制執行認諾条項付公正証書は、子供の養育費を含む金銭的な取り決めや約束が守られなかった時に効力が発揮されます。実際に強制執行に及ぶ際には、公正証書を作成した公証役場にて、執行文付与の手続きが必要になります。

離婚公正証書の存在によって、相手方に責任や義務という圧力が掛かり、養育費などを支払わなければならないという心理的効果が期待出来ます。離婚公正証書は貴方だけでなく、貴方の子供のためになるのです。

※離婚公正証書は、既に離婚届を出している場合であっても作成することが可能です。この場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

協議離婚において公正証書がなかったら

養育費の支払いには「義務(※当然しなければならない務め)」があります。つまり、たとえ協議離婚において公正証書を作成していなかったとしても、支払わなくていいという理由にはなりません。特に、あらかじめ両者の間で養育費の具体的な金額を決めていた場合、それは両者の合意と見なされるので、公正証書がなくとも有効です。

養育費は義務であるのに、なぜ公正証書を作成する必要があるのか?

なぜなら養育費を取り立てる際に、膨大な時間とお金を要することになるからです。また、支払いにおいて裁判を起こした場合に掛かるお金も相当な金額になります。

しかし、強制執行力のある公正証書があれば、養育費の支払いが滞った場合、すぐに次の手段に移ることが出来ます。差し押さえという強制手段であっても、即座の手続きが可能となるわけです。公正証書があるからといって養育費の支払いが確実になるわけではありませんが、支払われなくなった時の対処がしやすいという利点があります。

養育費はまた、子供から親(相手方)に対して、扶養料として請求することが出来るようになっています。これによって債務名義(※約束の存在・内容を明確にした証書)となり、強制執行をすることも出来ます。

※離婚公正証書は、既に離婚届を出している場合であっても作成することが可能です。この場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

調停離婚・裁判離婚

調停離婚とは、当事者の言い分を受けて、家庭裁判所の家事調停によって成立させる離婚のことです。夫婦が合意することによって協議離婚が成立するわけですが、この合意が得られなかった場合には、家庭裁判所において調停を行うことになります。

調停においても夫婦間の話し合いが主軸となりますが、調停委員が間に入ってくれます。この調停委員が、双方の意見を調整していきます。基本的に調停は非公開です。離婚する夫婦を別々に呼び出して話を聞くような態勢が取られています。

協議離婚に続き調停離婚も成立しなかった場合、選択肢は離婚訴訟になりますが、その間に、家庭裁判所が調停に代わる審判において離婚した方が良いと判断した場合には、審判が行われることになります。これが、審判離婚です。しかしながらも異議申し立てをすれば、この審判離婚が成立することはありません。

離婚訴訟は、原告と被告が離婚するという裁判を求める訴訟を指します。家庭裁判所の調停が不調に終わった際に、初めて持ち出すことの出来る方法です。この裁判によって離婚が成立した場合、裁判離婚と呼ばれることになります。

離婚訴訟では、離婚自体だけでなく、子供の親権者・養育費についても同時に申し立てることが出来ます。

※特別な場合を除き、調停を経ない裁判は不可能です。

調停離婚や裁判離婚における履行勧告と履行命令

公正証書に記載された通りの債務を履行しない限り、たとえ相手方である養育費の支払い義務者に支払いの意思がなかったとしても、強制執行から逃れる手段はありません。

しかしながらも、民事執行法第153条において、差し押さえ命令に対しては、全部または一部の取り消しを申し立てることが可能となっており、裁判所がこの申し立てを受けた場合、相手方の事情を考慮して、「差し押さえ命令の全部または一部を取り消すことが出来る」としています。

そうならないためにも、あらかじめ相手方の勤め先、預貯金のある銀行・支店・口座番号など、収入や財産の存在を把握しておくことが大切です。

それでも養育費が支払われなかったら・・・

強制執行までしても、貴方が思うような金銭の回収に至らないケースは、現在においても実は多くあります。たとえそのような事態に陥ったとしても、貴方が強制執行までの手段を取っていることによって、「約束や取り決めを破った時に、私はここまで徹底的に追求する気でいる」のだという、強い意志を相手方に伝えることが出来ます。これは相手方に、心理的な責任と義務を負担させる効果が期待出来るので、決して悲観的にならず、また子供のためにも諦めることなく、養育費の支払いを要求・催促し続けましょう。

強制執行1

「民事執行法(※請求権や担保権について定めている法律)」に従って、「私法(※個人の権利や義務など市民相互の生活上における法律関係を規律する法)」上の請求権を国家権力によって強制的に実現させる手続きのことを、強制執行と呼びます。

強制執行には、「債務名義」が必要です。債務名義は、約束や取り決めの存在と内容を証明するものであり、これで裁判所に申し立てを行うのです。つまり、債務名義がないと、強制執行をすることが出来ません。

債務名義一覧
  • 強制執行認諾条項付公正証書
  • 調停調書
  • 審判書
  • 和解調書
  • 確定判決 など

※合意書や覚書、離婚協議書等は私文書なので、債務名義にはならないことに注意して下さい。

強制執行をすることによって、養育費の支払い義務者である相手方の収入や財産を差し押さえ、強制的に金銭を回収することが可能となります。

強制執行の対象
  • 会社勤めの場合:給与や賞与 など
  • 自営業の場合:会社や個人の売り上げ など
  • 不動産:土地や建物 など
  • 動産:家財道具や自家用車 など
  • 預貯金
※会社勤めである養育費支払い義務者の差し押さえの場合、相手方の会社と交渉することによって、給料からの天引きという形で、養育費を毎月きちんと確保することが出来るようになっています。

強制執行2

公正証書に記載された通りの債務を履行しない限り、たとえ相手方である養育費の支払い義務者に支払いの意思がなかったとしても、強制執行から逃れる手段はありません。

しかしながらも、民事執行法第153条において、差し押さえ命令に対しては、全部または一部の取り消しを申し立てることが可能となっており、裁判所がこの申し立てを受けた場合、相手方の事情を考慮して、「差し押さえ命令の全部または一部を取り消すことが出来る」としています。

そうならないためにも、あらかじめ相手方の勤め先、預貯金のある銀行・支店・口座番号など、収入や財産の存在を把握しておくことが大切です。

それでも養育費が支払われなかったら・・・

強制執行までしても、貴方が思うような金銭の回収に至らないケースは、現在においても実は多くあります。たとえそのような事態に陥ったとしても、貴方が強制執行までの手段を取っていることによって、「約束や取り決めを破った時に、私はここまで徹底的に追求する気でいる」のだという、強い意志を相手方に伝えることが出来ます。これは相手方に、心理的な責任と義務を負担させる効果が期待出来るので、決して悲観的にならず、また子供のためにも諦めることなく、養育費の支払いを要求・催促し続けましょう。

養育費未払いのまとめ

養育費とは、経済的・社会的に自立していない子供が自立するまでに、生活や教育に必要な費用のことです。具体的には、衣食住を維持するための経費、医療費、教育費などが挙げられます。

子供に対する養育費の支払い義務は、扶養義務の1つでもあります。親の生活が充分でない場合であっても、親と同じ生活を保障させるという生活保持義務に当たるのです。だからこそ、たとえ親が自己破産していても、子供の養育費を支払わない理由にはならないわけです。

子供にその必要性が認められる時に、養育費はいつでも相手方に請求することが出来ますが、もし、離婚時に「いらない」という旨の主張をしていた場合、相手方が拒否することも予想されます。しかしながらも養育費の請求権は、子供のために存在するものです。話し合い、家庭裁判所の調停や審判、裁判などで、きちんと取り決めなければなりません。

子供に対して父母は、親として子供の生活を保障し、心身の成長を支える責任と義務があります。相手方が養育費を支払うことは、子供への最低限の義務だということに限らず、離れて暮らすことになってしまった相手方と子供とを結ぶ絆にもなることを忘れないで下さい。

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soudan

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