コラム

過去の養育費をさかのぼって払ってもらいたい

別れた子供の手

離婚してこれまで妻(夫)のみで子どもを養ってきたが、やはり生活が厳しく、養育費を請求したい。この場合、今後の養育費だけでなく、過去の支払われていない養育費までまとめて請求することはできるのでしょうか?

過去の養育費については、請求すること自体は可能です。話し合いで相手が応じた場合は問題ありません。しかし、話し合いがまとまらず調停となると、離婚の際に養育費の取り決めをしているかどうかが鍵になってきます。

取り決めをしていない場合

離婚時に養育費について取り決めをしていない場合、話し合いがうまくいかなければ家庭裁判所に調停を申立てることになります。しかし、過去の養育費についての判例は分かれており、一概には言えないのが現状です。

養育費の請求には、大きく3つの考え方があります。

  1. 請求をした時点から養育費が発生するとして、過去の養育費については支払いを命じない。
  2. 扶養義務は、養育費の請求をされなくても発生していたと考え、過去の養育費の支払いを命じる。
  3. 家庭裁判所に調停又は審判の申立てをした時点で養育費が発生すると考える。

家庭裁判所では、父母双方の収入や資産・生活の状況・子どもの年齢や人数などの事情を考慮して判断します。

つまり、過去の養育費の請求をすることはできますが、それが認められるかどうかは家庭裁判所の判断に委ねられるということです。

取り決めをしていたが払ってもらえていない場合

離婚の際に養育費についての取り決めを交わしている場合は、契約した時点以降の未払いがすべて認められる可能性が高いのではないでしょうか。しかし、民法によって「請求権の時効」が定められていますので、注意が必要です。

離婚協議書や公正証書で金額の契約を交わしている場合、その養育費請求権は5年で消滅します。一方、家庭裁判所の調停や審判で養育費を取り決めた場合は、10年でその権利が消滅すると定められています。このような養育費の時効のことを、「消滅時効」と言います。

養育費は、子どもの現在の生活のために必要なお金であるという性質から、過去にさかのぼって充足させることは難しいという考えがあるようです。また、現実的に、過去にさかのぼった多額の養育費を支払えるかどうかという問題もあります。

ただし、この消滅時効については、相手が時効を理由に支払わないと宣言した場合にのみ有効となります。相手が時効のことを知らなければ、時効となった過去の養育費についても請求し、受け取ることが可能です。

なるべく早く行動を!

養育費の請求権については、なくなることはありません。しかし、離婚時に養育費についての取り決めをしているかどうかで、時効が発生するかどうかに違いがありますので、注意が必要です。

養育費をいつまでさかのぼって認めるかについては明確な基準がなく、ケースバイケースと言わざるをえません。

どちらにしても、請求をした時点・調停を申立てた時点から認められるケースがあることを考えれば、過去の養育費についてはなるべく早く行動を起こした方が得策と言えるでしょう。

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